尿検査(検尿)

ピルの処方前に尿検査(検尿)は必要?

ピル処方前の尿検査(検尿)は、糖尿病の有無、腎臓や肝臓の健康状態からリスクを探る検査です。

1999年に日本産婦人科学会が作成したガイドラインでは、検尿はピル服用前に必要な検査のひとつでした。しかし2005年に同ガイドラインが改訂された際、尿検査で判断していたリスクは問診で把握できる、という指摘により、必須検査からは除外されています。

ガイドライン除外後も、クリニックによっては実施

実際はクリニック独自の方針によって検査項目を設定しているため、いまでもピル処方前の検査項目として、尿検査を実施しているクリニックもあります。妊娠の有無を尿検査によって判断するというクリニックもあります。

尿検査を求められた場合は、検尿で何を診るのか、医師に確認するといいでしょう。

検尿ってどんな検査?

腎臓をはじめ体のどこかに異常が起こると、本来排泄されるべきではない成分が尿に混じっていたり、逆に体に不用な成分が排泄されなかったりします。尿の中の成分や性質、量を調べることで、体内の異常を探ります。

尿検査でわかること

ピル処方前の検尿では、糖尿病・腎臓・肝臓の健康状態がわかる蛋白ウロビリノーゲンの3つの成分を調べます。

蛋白から腎臓の病気がわかる

尿中の蛋白を調べることで、腎臓や尿路系に異常がないか分かります。血液中の蛋白は、「腎臓でろ過」「尿細管で吸収」という2つの過程を経て血液中に戻ります。蛋白が尿中に漏れ出しているということは、腎臓か尿細管のいずれかの関門が正常に機能していないことを意味します。

糖から糖尿病の可能性がわかる

尿中の糖を調べることで、糖尿病の可能性が分かります。血液に含まれる血糖は、「インスリンに分解される」「呼吸によって体外に排出される」という2つの方法で代謝されます。健康体であれば尿に血糖が漏れ出すことはありません。体に異常がある場合、糖は腎臓から尿に漏れ出します。

ウロビリノーゲンから肝臓の病気がわかる

肝臓の病気や黄疸などを診断する検査です。ウロビリノーゲン(の一部)は、肝臓を通って尿とともに排泄されます。肝臓の障害や黄疸があらわれると、尿中のウロビリノーゲン値が高くなります。

どうやって検査するの?

蛋白、糖、ウロビリノーゲンとも、定性検査なら尿中に試験紙を入れて調べることができます。試験紙の色の変化をみることで、陰性、偽陽性、弱陽性、陽性などの結果が出ます。

検査結果の見方は?

蛋白定性の見方

正常値なら陰性(-)、偽陽性(+-)。異常値は陽性(+)です。蛋白は、激しい運動や精神的なショック、強いストレス、疲労などでも検出されることがあります。再検査の結果でも異常値が出る場合は、腎臓の病気や糖尿病が疑われます。

糖定性の見方

正常値なら陰性(-)、偽陽性(+-)。異常値は陽性(+)です。もちろん糖の値が陽性と出ただけで、糖尿病と診断されることはありません。糖尿病の疑いがあるため、血糖検査やブドウ糖負荷試験などの再検査を行なって、総合的に判断します。

ウロビリノーゲン定性の見方

正常値なら偽陽性(+-)、弱陽性(+)。異常値は陰性(-)と陽性(++)です。陰性なら胆道(胆嚢、胆管)の病気の疑いがあります。陽性なら肝炎、肝硬変、黄疸が疑われます。

尿検査で分かる病気とピルの危険性

ピルと糖尿病の組み合わせは、循環器系の病気を増やす要因になります。

重度の糖尿病の場合は、ピルが健康を脅かす恐れがあるので服用できません。軽度の糖尿病であっても、例えば喫煙との組み合わせはリスクを倍増させます。本人に糖尿病の疑いがある場合は、ピルの服用に関して、医師と密な相談が必要になるでしょう。また家族に重度の糖尿病患者がいる場合も、慎重な管理が必要になります。

黄疸を引き起こす肝疾患(ウイルス性肝炎)、薬剤性の肝臓障害を患っている場合、ピルの服用は避けましょう。検査結果が正常になった後でも3カ月は服用を避け、服用後の経過観測では肝臓の検査を行うようにしましょう。

肝硬変など胆汁の排泄異常の場合、ピルは絶対に服用してはいけません(禁忌)。胆石の治療を受けたことがある場合も、胆管系に再発の可能性があります。同じくピルの服用は避けるようにしましょう。

この記事を書いた際の参考文献