内診(膣内診)

みんなが苦手な内診、必須検査なの?

内診(膣内診)は、婦人科で受けられる診察や検査のなかでも、特に苦手だという方が多い診察です。

インターネット上の掲示板を見てみても、過去に内診で嫌な思いをした、という声や、そもそも内診が嫌で婦人科に行けない、といった声まで聞こえてきます。

内診は、女性特有の病気の予防という観点からは大切な検査ですが、ピルの処方を希望した場合の診察としては適切なのでしょうか?

ピルの処方に内診(膣内診)は必要ない

結論から述べてしまえば、経口避妊薬(低用量ピル・OC)を処方する前の検査において、内診は必要な検査ではありません。なぜなら、内診によって分かる症状は、ピルの安全性や効果については大きく影響しないからです。

以前は「必須」も、現在は「任意」に

避妊を目的としてピルを処方してもらう場合、利用するのは健康な女性です。検査の目的も病気の発見ではなく、副作用の可能性をできるだけ減らすことになります。この視点で考えた場合、内診は過剰な検査項目と言えます。

ピルの国内処方が解禁された1999年当時、内診は服用前に必要な検査項目のひとつでした。実際に処方例が増えていくなかで、ガイドラインは医療現場の実情に合うよう改訂されてきました。その結果、必須の検査項目は「問診と血圧測定(身体測定)」になったのです。

「内診なし」を明記するクリニック

内診の有無に対する女性の不安を解消するため、あらかじめホームページ上に「内診なし」と記載してくれるクリニックも増えています。下記以外の最寄りのクリニックの場合でも、事前にピル処方までの診察内容を問い合わせた上で訪れると安心です。

そねクリニック(東京/新宿)

東京都新宿区にあるそねクリニックのホームページでは、初めての患者に対して以下のように説明しています。(そねクリニックの病院情報)

(診察では)内診はいたしません。ピル処方と内診は基本的に無関係であるためです。

ラ・クォール本町クリニック(大阪/元町)

大阪府大阪市中央区本町にあるラ・クォール本町クリニックのホームページでは、ピルに関するQ&Aで以下のように回答しています。(ラ・クォール本町クリニックの病院情報)

初回は、血圧測定と問診(リスクがないかどうかを聞く)だけです。内診はありません。

アイさくらクリニック(福岡/天神)

福岡県福岡市中央区天神にあるアイさくらクリニックのホームページでは、ピルに関する費用の説明で以下のように記載しています。(アイさくらクリニックの病院情報)

はじめてお薬の処方を受ける場合は、必ず医師の問診と血液検査が必要です。(血液検査代3500円税込)内診はありません。

問診の結果では内診をおこなうことも

処方前でも、病気と診断されるほどの重い生理痛(月経困難症)を持っていたり、子宮筋腫が疑われるような症状がみられる場合は別です。服用の経過観察のなかでも、内診が必要になることもあります。

そもそも内診ってどんな検査?

あまり良いイメージがない内診。そもそも内診ではどんな診察をするのでしょうか?

内診(双合診)では、医師が左手でお腹を押さえながら、手袋をはめた右手の指を膣内に入れます。子宮(子宮頸部)、卵管、卵巣などの状態を、実際に手や指で触って診断します。

内診で何が分かるの?

内診では主に、膣や子宮頸部、卵巣の状態を診ます。

外陰部や膣の状態の確認、おりものの状態や量、子宮膣部の腫瘍やびらんの状態、子宮頸管ポリープの有無、子宮の向きや位置、大きさ、硬さ、動きの具合などを細かく診察します。子宮筋腫、子宮内膜症などの病気についてもチェックします。指で押してみて痛みがないか、まわりの臓器とのひきつれがないかなども、丁寧に診察していきます。また、妊娠の診断も内診で行います。

内診は内診台(産婦人科検診台)で行います

内診は、診察室の中にある内診台(産婦人科検診台)の上で行われます。婦人科によって新しい内診台や古い内診台など、タイプや形は異なりますが、雰囲気は美容院のシャンプー台に似ています。

診察の際は、背もたれが下がり、足がゆっくりと開きます。慌ててバランスを崩してしまい、内診台から転げ落ちないように注意しましょう。

なお最新の内診台は、台座が回転しながら背もたれが後ろに下がって足が開く(!)という、ちょっとしたアトラクションの仕掛けのような機械です。(参考: 産婦人科検診台│産婦人科機器

内診が必要となる婦人科の病気

内診は、低用量ピルの処方には不要でも、婦人科疾患の診断や治療には大切な検査です。内診で分かる疾患や症状は以下のとおりです。

感染症(性感染症)の診断や治療
淋菌やクラミジアなどで起きる、生殖器官の炎症(骨盤内炎症性疾患)
膀胱炎
腫瘍の診断や治療
出産や喫煙などで起きる、子宮筋腫
重い生理痛、生理が長い(短い)場合などによくみられる、子宮内膜症
婦人科がん(子宮体がん/卵巣がん)
内分泌・不妊の診断や治療
病気などが原因でない(機能性)月経困難症
その他の婦人病の診断や治療
更年期障害
尿失禁
性器脱

これら疾患の診断や治療は内診にて行います。ピル処方前の問診の結果から上記の疾患が疑われた場合は、医師の判断のもとで内診が行われます。

気になる内診の疑問

Q.理をずらす目的でピルの処方を希望した場合でも、内診はあるの?
A.生理を遅らせる・早める・ずらす(旅行ピルとも呼ばれる)目的でピルの処方を希望しても、低用量ピルと同じく、基本的に内診は必要ありません。

問診などでピルの副作用や禁忌が疑われた場合のみ、医師から内診の提案があるかもしれません。

Q.生理中でも内診はあるの?

A.生理中(月経中)でも内診は行えます。実際に内診を行うかどうかは問診や症状を聞いた上で、医師が判断します。なにかしら内診が必要な問題が見つかった場合は、日を改めて内診だけを行う場合もあります。

逆に生理中の方が異常を発見しやすい場合もあります。ピルの処方に限らず、生理中に強い痛みを感じるような場合は、婦人科の受診をおすすめします。

この記事を書いた際の参考文献