血圧測定

ピル処方前にかならず行う血圧測定

低用量ピル(OC)の処方を希望する場合、ほぼすべて婦人科やレディースクリニックで行う検査が、血圧(BP/Blood Pressure)の測定です。

血圧測定の重要性は、WHO(世界保健機関)が推奨する、低用量ピルの処方前に実施すべき検診(WHOSPR)にも記載されています。処方前の正確な血圧測定は、すべての女性にとって必須の検査です。

健康診断などで何気なく受けている血圧測定ですが、ピルの処方・服用を受ける場合、血圧値がどう影響してくるのでしょうか?

そもそも血圧測定ってどんな検査?

血圧測定は、血管にかかっている圧力を調べることで全身の健康状態を調べます。血圧を測ることで、高血圧によって引き起こされる病気をチェックし、予防できます。

血圧の測定方法は、おおきく分けて2種類です。血管にカテーテルを直接挿入して測定する観血式。二の腕(上腕)などに機器を巻いて測定する非観血式があります。多くの婦人科やレディースクリニックでは、患者の負担がかからず簡単に測定できる非観血式が利用されています。

測定するのは最高血圧と最低血圧

心臓が縮んで血液を動脈に送り出すときに血管にかかる圧力を最高血圧。逆に心臓が元に戻って血液をためるあいだの血圧を最低血圧といいます。なお、血圧はmmHg(ミリメートルエイチジー)という単位であらわします。

血圧を測定する際は、食事を取るなら1時間前までに、トイレにいく場合は5分前までには済ませて安静な状態で正確に測りましょう。

測定値の見方は?

理想的な血圧は、最高血圧が120mmHg未満、最低血圧が80mmHg未満です。少し幅を持たせるなら、最高血圧が平均140mmHg未満、最低血圧の平均が90mmHg未満(140/90mmHg)が基準範囲内の数値です。

ピルの処方が受けられる血圧の範囲

日本産科婦人科学会による低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン(平成17年12月)では、低用量ピルの処方が受けられるのは、最高血圧が140mmHg以下、または最低血圧が90mmHg以下の場合です。この値を超えるような高血圧と診断されると、ピルの服用によるメリットよりもリスクが上回ってきます。無理な利用は避けて血圧が安定するまで服用を見送りましょう。

一般的な血圧測定で分かることは?

血圧は、時間や気候、食事や運動、その他にもストレス、体重、精神的なことでも変動します。

継続して高い場合は、動脈硬化、脳出血、脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、腎不全など生活習慣病の原因となります。血圧測定はこれらの予防に欠かせない大切な検査です。逆に低血圧の場合は健康的なことが多いため心配ないでしょう。

ピル処方時の血圧測定から分かることは?

まず単純にピルの服用が可能かどうか、血圧値によって決まります。基準値を超えてしまうほど血圧が高い場合は、ピルの処方を見送られることがあります。

次に発症のリスクが高まる血管系の疾患や病気が、事前に把握できます。

ごくまれですが、低用量ピルに含まれるホルモンに体が反応し、血圧が上がってしまう体質の女性がいます。現在が高血圧である、もしくは過去に高血圧の既住があった場合は要注意です。

血圧が高い状態で低用量ピルを服用した場合に起きやすいものは、動脈血栓症、静脈血栓症、血栓性脳梗塞などです。

最近のデータで分かってきた、低用量ピルの服用によって起きる重大疾患のリスクは次のとおりです。

高血圧がまねく重大疾患とリスク

心筋梗塞は、心臓に血液を送る冠動脈に血栓が詰まることで起きます。心筋梗塞の数は、年間で1万人が利用したとして1人(10万人年当たり10.1)でした。

脳梗塞は、心臓にできた血栓が移動して脳の血管を詰まらせることで起きます。脳梗塞(塞栓性脳梗塞)の数は、年間で1万人が利用したとして2人(10万人年当たり21.4)でした。

低用量ピルのリスクは低い

心筋梗塞と脳梗塞のリスクを知る上で、妊娠時の静脈血栓症のデータと比較してみましょう。

女性が妊娠中および分娩後、12週間以内に静脈血栓症を発症する頻度は、年間で1万人あたり5人から20人、および40人から65人と報告されています。

低用量ピルを服用している場合と、妊娠中や分娩後の状態を比較してみると、低用量ピルによって血栓症が起きる頻度・リスクはかなり低いことが分かります。

定期的な血圧測定で怖い病気が予防できる

不必要にピルを怖がってしまっては、リスクはもちろんメリットすら放棄してしまうことになります。血圧の影響による脳梗塞や心筋梗塞は、発症してしまうと重篤化するケースもあるため、初回処方時の測定はもちろん、定期的に血圧測定を行い、自身の健康状態を把握しておきましょう。

この記事を書いた際の参考文献